甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》






「さすが旦那様。とてもお似合いですね。この細いレザーベルトをしていただくと…失礼致します」

紫乃の前に膝をついて腰にごく細いレザーベルトを巻いた店員は

「すとんとゆったりお召しいただいても、このように軽くウエストをマークして頂いても、あとは前を全て開いて羽織り物としてもお召し頂けます」

さらに

「私、個人的にはママさんにこのベルトがとてもオススメなんです」

と言う。

「ワンピースじゃなくてベルトですか?」
「はい。小さなお子さんのおられるママさんは、動きやすさと洗濯のしやすさ重視なのは当然ですよね?頭からかぶって完成の…こちらのようなワンピースもとても活躍するし、こういうスタイルの方を多く見かけるんですけど、このTシャツワンピースにもこの細いレザーベルトをつけていただくと…手抜きの楽チンスタイルから脱却できると思うんです」

店員はハンガーにかかった別のワンピースにベルトを当てて見せる。

「なるほど…」
「お部屋からそのままスーパーに来ましたとか、幼稚園の送迎は毎日だからゆるゆるのままでいいや…じゃなくて、これ一本でお洒落上手な素敵なママさんになると思って、私は大活躍させていますし、妹にもプレゼントしました」
「ベルトはブラウンとホワイトでもらう。こっちのハンガーのワンピースは…テラコッタで」
「壱?」
「お洒落な可愛らしい紫乃が見たい」

子どもがいるらしい店員、いい働きをするじゃないか。雪乃も寝たからやりたい放題だ。

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