甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》
「どちらのワンピースにも、この滑らかなスエードを細かいスタッズで縁取ったスクエアトゥサンダルはぴったりですよ。スリッパ感覚の楽な足入れとぺたんこの安心感がありながら決してルーズにならないお洒落の仕上げにぴっ…」
「もらう」
「今年初めて、ジョガーパンツを出したんですけど…こちらです。裾に向けてやや細くなる細身のテーパードシルエットですので、ジョガーパンツといってもスウェットのようにおうち感満載ではなく綺麗に履いていただけると思います。もちろんウエストはゴムですのでデイリーにもお使いいただ…」
「もらう。パンツは試着」
「ありがとうございます。かしこまりました」
紫乃を試着室から出すことなく次々と買い物を続け
「これぐらいか…以上でお願いします」
「「ありがとうございます」」
いつの間にか2人になっていた店員が寝ている雪乃を気づかい小さく声を揃える。
「お疲れ、紫乃。今から紫乃のいつも行ってる店に行こうな」
試着室から出てきた紫乃は言うと
「もういいよ。いっぱい買ってもらったもの。ありがとう、壱」
と、とても穏やかに言い
「地下でフレッシュジュースを飲んでから帰りたいな」
そう可愛らしくお願いしてきた。可愛らしい…少し俺の腕に手を添えるところなんかパーフェクトだ、紫乃。