義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
「わ、私はまだそういう気持ちになれない。お兄ちゃんのことは、好きだけど……。今も昔も兄妹としか思えないから」

大嘘だ。私はずっと兄をひとりの男性として好き。
だけど、拒否の理由が他に思いつかない。義父や母のことを言えば「気にするな」と言うに決まっている。

しかし精一杯主張してみたけれど、義兄に怒りや傷ついたような様子は見えない。どこか余裕たっぷりに微笑む彼からは、なお優しさと愛情があふれていた。

「そうか、そうか。ぼたんはまだ俺を兄としか見られないか。ぼたんからの熱い視線は勘違いだったか」
「自惚れないでって、この前も言ったじゃない」
「まあ、時間はある。同居生活は続くし、俺ももう遠慮はしない。そのうちおまえから抱いてくれと懇願するくらい愛してやろう」

抱いてくれ……絶対そんなこと言わない。言えない。
心の中で唱えるうち、真っ赤になっている自分を感じていた。

義兄は湯飲みを手にし、ひと口飲んだ。それから改めて忠告する。

「ともかく叔母夫妻や蘭奈より、雄太郎に気をつけろ。今後はおまえにも接触してこようとするかもしれない」
「今はお兄ちゃんの方が立場は上なんでしょう。何かあれば、自分や家族の立場がなくなるって思ったらできないんじゃないかな」
「雄太郎はもう後継者の道は諦めている。今後も俺より上にいけることはないと自覚している。だからこそ、俺に精神的なダメージを与えたいと思っているだろう。俺の想い人を寝取るなんて最高の意趣返しになるだろうな」

身震いしてしまう。そんなのは絶対に嫌だし、応じる気はないけれど、強引な手段を取ってこられたらどうしよう。
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