義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
「これから俺は贖罪をしなければならないな。おまえに冷たくした分、一生を懸けて愛をささげなければならない」
「お兄ちゃん……」
「俺の妻になってくれるか? ぼたん」

ささやかれるプロポーズ。嘘みたい。お兄ちゃんが私にキスをして、一生を誓おうとしてくれている。

嫌われたと思っていたのに。実は深く愛されていたなんて。
私だってずっと愛していた。離れても全然忘れられなかった。
この人のものになりたい。妻として隣にいられたら……。

そこまで考えて私の脳裏に母と義父の姿がよぎった。
義父と母は愛情で結びついたはずだ。仮にも兄妹となった我が子が結ばれてしまったら、生理的な嫌悪感などは覚えないだろうか。
そして、義父はずっと義兄の婚約者を探している。今日蘭奈さんの要望を断ったときにもそのようなことを言っていた。

私ひとりの気持ちで兄に応えてしまったら、多くのものを台無しにしてしまうのではなかろうか。

さらに、母の言葉が浮かぶ。丞一坊ちゃんとは見る世界が違う。甘えすぎては駄目。
……最初から私とは住む世界が違う人。それが天ケ瀬丞一。
まるで神様を地上に引きずり降ろしてしまうような罪悪感だった。

目の前で返事を待つ兄は、愛おしそうに私を見つめている。
私は顔を伏せ、かぶりを振った。
胸を押し返せば、腕がはずれ抱擁から逃れることができた。膝から降り、数歩下がる。
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