雨上がりの景色を夢見て
「こんな時くらい、甘えるのも大事よ」

ニコッと笑った夏奈さんに、私は何も言えなくなる。笑ってはいるけれど、私を家に帰らせる気がない事が伝わってきたのだ。

「…はい」

今日は、夏奈さんに甘えよう…。

私は素直に頷いて、口元まですっぽりと布団をかぶった。

ふと、私は一体この部屋までどうやって運ばれてきたのかという疑問が浮かんだ。

まさか…

「な、夏奈さん…」

部屋を出ようとした夏奈さんを呼び止める。不思議そうに振り向いた夏奈さんに、布団に横になったまま言葉を続けた。

「私をここまで運んでくれたのって…」

「もちろん、夏樹よ」

夏奈さんはそう言って笑顔を見せると、部屋を後にした。

恥ずかしくて、ただでさえ熱い身体がさらに熱を帯びる。

動けなかったとはいえ、男性に、しかも同じ職場の人に運んでもらうなんて、恥ずかしすぎる。

重かっただろうな…。

会ったら、お礼を伝えよう…。

また眠たくなってきた…。

少しずつ、記憶が途切れ途切れになり、瞼が下がってくるのが分かった。




< 112 / 538 >

この作品をシェア

pagetop