雨上がりの景色を夢見て
頬から伝わる体温に、自分の鼓動が徐々に速くなっていく。

今目を覚ましたら、誤解を招いてしまうと、冷静に考えられる反面、どうしてもこの手を無理に離そうとは思えない。

矛盾している…。

穏やかな表情の中川先生を見てしまうと、暫くは、この手を貸し出しておいてもいいかな、と思ってしまう。

何やってんだよ…俺。

俯いて小さく息を吐き、もう一度、中川先生を見る。

夏奈には詮索するなと言っておきながら、頭の中であれこれ考えてしまう。

9年前となると…中川先生は高校3年生か。つまり貴史くんとは同級生。

そうだよな、どう考えたって貴史くんと中川先生は青春真っ只中だったよな…。






『この紫陽花、綺麗よね』

毎年、大和田さんとお墓で合流する度に、すでに供えられている紫陽花を見て大和田さんが嬉しそうに言っていた姿を思い出す。

『会えていないのだけど、いつもこの日に紫陽花持ってきてくれる子がいるのよ』

その時は、貴史くんと親しい友人かな。仕事で忙しいのだろうか。

などと、軽く捉えていた程度だった。

でも、今日その紫陽花を持ってきていたのは中川先生だと知って、複雑な事情が絡み合っているのだと理解した。




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