雨上がりの景色を夢見て
「よかったらコーヒー飲んでいきませんか？」

寝てしまったことに申し訳なさそうな表情をしている雛ちゃんは、俺の顔を見てそう言った。

「ありがとう。でも、今日は気持ちだけ受け取っておくよ」

きっと、まだ疲れているのだと思い、ゆっくり休んでほしくてそう返事をする。

だけど、俺は雛ちゃんが一瞬だけ、寂しそうな表情をしたのを見逃さなかった。

「明日仕事だから、ゆっくり休んで」

思わず、彼女の頭に触れて、微笑みかけた。

ほんのり顔を赤らめて頷く雛ちゃんに、胸が大きく鼓動し、頭に触れていた手が頬へと移動する。

潤んだ大きな瞳が、俺をまっすぐ見つめて、理性を掻き乱しそうになる。

俺は、ぐっと耐えて、手を離すと、そのまま後部座席の紙袋を手に取った。

「本当は、プロポーズと一緒に渡す物なんだけど…はい」

話をしながら、恥ずかしくなってきて、紙袋を雛ちゃんに差し出す。

そっと手が伸びてきて、紙袋を受け取った。

「開けていいの？」

まだ赤く染まった頬の雛ちゃんは、俺の顔を覗き込む。まだ潤んでいる瞳に吸い込まれそうな感覚になりながら、俺はニコッと微笑みかけた。

「うん、ぜひ」

袋の中の小さな箱を取り出す彼女の姿に、どんな反応をするか緊張した。

りぼんをほどき、箱の中から小さな白い入れ物を取り出す。ゆっくりと蓋を開けた雛ちゃんは、中を見て、動きが止まった。






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