雨上がりの景色を夢見て
「高梨さんは、教科は何を教えてるの?」

「え、英語です」

まだ少し緊張気味に答える高梨先生。そんな様子に、母は、ふふふっと笑った。

「雛、新婚旅行に海外に行っても安心ね」

「お母さん、気が早いわよ…」

「あら、いいじゃないの。楽しいことが先にあると、人生さらに充実するわよ」

母らしいなと思う言葉だと感じながら、私はいくらの軍艦巻きをひと口で頬張った。

ふと、お母さんが、じっと高梨先生の顔を見ていることに気が付き、私は首をかしげる。
私の視線に気がついた母は、私の方を向き、不思議そうに口を開いた。

「もしかして…以前海で菜子といた時に会った先生かしら?私と仁さんは喫茶店で休んでいた時のことよ。遠目でしか確認していないけど…似てる気がするのよね」

そういえば、そんなこともあったなと思いながら、私は頷いて言葉を続ける。

「そうよ。ちなみに、あの時、菜子がモデルさんみたいな女性と会ったって言ってたの、覚えてる?」

あの時の、キラキラした菜子の表情は、いまでもよく覚えている。

「覚えてるわ」

「その女性は高梨先生の妹さんよ」

「あら、じゃあ菜子、大喜びするわね!」

母の表情が、ぱあっと、さらに明るくなり、にこにこと笑顔になった。


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