雨上がりの景色を夢見て
しばらく無言だった高梨先生は、家が見えなくなると、ほっと息を吐いた。

「大丈夫だったかな…？」

「大丈夫です」

自信なさそうにそう呟いた高梨先生を見て、私は即答する。

母も仁さんも高梨先生とのことを快く受け入れてくれた。何より、仁さんがわざわざ会社から1度戻ってきて、結婚することに対して背中を押してくれたことが大きかったと思う。

多分、母は仁さんが来るように、あえて私が大切な人を連れてくるということを連絡したのだ。

「このまま家に送って、また夜に迎えに来るよ」

今日は夏奈さんも含めて、３人で夜ご飯を食べる約束をしている日。高梨先生が料理を振舞ってくれると前から約束していた。

「でも、また帰りに私のこと送るの大変ですよね。夏樹さん、お酒飲めなくなっちゃいますし…私自分の車で行きます」

「それだと、雛ちゃんが飲めないからなぁ…。電車だと、駅からの夜道心配だ…」

しばらく2人に間に沈黙が流れる。何かいい案がないのか、絞り出す。けれども、私の頭には何も浮かばない。

「…じゃあ、泊まってく？」

えっ…

私の顔を遠慮気味に見る高梨先生と目が合う。

「…あっ、いや、寝るとこは夏奈の部屋使えばいいからさ」

少し慌てて、そう付け足した高梨先生。その様子がちょっと面白くて、クスッと笑ってしまった。

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