雨上がりの景色を夢見て
番外編
ガチャッ

あれ?鍵開いてる。

雛もう帰ってきてるのか。てっきり俺の方が早いと思ってたのに。

今日の天気が雨ということもあって、部活動が早く終わり、久々に夕飯を作って雛の帰りを待っていようと思っていた。

玄関まで、おそらくシチューっと思うようないい匂いが漂っている。

「ただいまー」

「おかえりなさい。早かったのね」

最近、やっと敬語の抜けた雛が、優しく微笑んだ。

「部活早く切り上げたから。雛こそ珍しいね」

「うん。ちょっと病院行きたくて、午後のお休み貰ってたの」

えっ、病院?

「津川先生のところ?体調、あまり良くないの?」

「ううん。そうじゃなくて、ちょっと気になるところがあって」

そう言った雛は、確かに顔色は悪くなく、元気そうにシチューを盛り付けている。

「着替えてきたら?ちょうどシチュー出来たから」

「あっ、うん」

一体、何の病院?耳鼻科とか、歯医者とか?

後で聞いてみよう。

俺は、一度部屋へ戻り、着替えて再びリビングへと向かった。

テーブルには、シチューとガーリックトースト、サラダが並んでいる。

「いただきます」

そう言って、雛と向かい合って、あつあつのシチューをスプーンですくって口へと運んだ。

< 535 / 538 >

この作品をシェア

pagetop