雨上がりの景色を夢見て
あっ、そうだ。

「病院って、何の病院?」

「えっと…ちょっと待っててね」

口に運びかけていたスプーンを置いて、雛は立ち上がって、リビングの小さな棚の引き出しから何かを取り出した。

「実はね、2週間前にも1度病院に行ってたんだけど…今日やっと伝えられる」

座りながらそう言うと、俺の前にそっと2つの物が並べられた。

1つは、赤ちゃんのイラストの描かれた手帳。もう一つは、白黒の写真。

これって…

俺は手に持っていたガーリックトーストをお皿に置いて、手帳と写真から雛へと視線を移した。

「赤ちゃん、いるの。今日母子手帳貰えるくらい成長してた」

きらきら輝く優しい笑顔で、雛はそう言うと、ふふっと声を漏らした。

「…待って、嬉しすぎて、なんて言っていいか…」

突然の報告に、俺は何を言っていいのか分からなくなった。

だけど、

「おめでとう」

そう自然と口に出ていた。

「…えっ、予定日は?」

「5月9日だそうよ」

今日は、10月8日だから、約7ヶ月後には、俺は父親になるってこと?

「俺、全然気が付かなかった。えっ、つわりとかは?」

「それが、ちょっと胃もたれしやすいかなってくらいで、全然無いの」

俺、つわりってドラマのイメージしかないけど、平気な場合もあるんだな。



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