パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
「Approaching minimum 」(計器飛行で着陸の為に進入する際下降できる最低の高度)
「Check 」

「Minimum 」
 これが着陸の最終判断になる。
 貴堂はコールした。
Landing(着陸する)

 霧のロンドンというくらいロンドンの天気は不安定なことも多く、霧の場合は着陸方法も手動だけでは行えなくなったりもする。

 けれども、今日の天候はうす曇りで風もそれほどない。爽やかでいい天気とまでは言わないが、着陸に問題がないのは何よりだ。

 今回一緒に乗務しているコーパイはまだ新人のため着陸時は貴堂が操縦する。これがベテランのコーパイならば、操縦を任せることも多い。

 西からの緩い風……機体を操縦しながらそんな風を感じることが貴堂にはある。風には逆らわない。そこに翼を置くような感覚は独特だ。

 その間にもひっきりなしに入る管制とのやり取りも、計器類のコールもすべて情報として耳に入ってきていて問題がないことを確認しながらも、機体を着陸させることに神経を集中させた。

『One hundred……Fifty……』
 どんどん設置面が近づいてくる。
『Thirty、Twenty ……Retard, Retard』
 機体が地面に対して水平であることを確認して、貴堂はスラストレバーをアイドルにする。
ふわりとした接地。この天気ならば上々の接地だった。
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