パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
 貴堂が非常に頼りがいもあり、優秀な人物であることは認める。

 けれど、それと兄としての感情はまた別だ。紬希は可愛い妹なのだから。
 透の胸の内は非常に複雑なのである。



 空港への道は紬希は何度か行って慣れている。
 紬希はチェックインカウンターを通り越し、一番奥のエスカレーターを上がっていった。

 大きなガラス張りのドアが開くと、そこが空港デッキだ。

 紬希は端の方の人目につかないベンチに座る。
 綺麗に整列した飛行機が順々に着陸していくのを見るともなく見ていた。

──とってもお行儀がいいわ……。

 ちょうど着陸の重なっている時間帯なのか、次々降りてくる飛行機のどれが貴堂のものなのか、紬希には区別はつかない。

そんな様子を飽きるともなく見ていた紬希の頭の上にポン、と手が乗せられる。
そんなことをするのはたった一人しかいない。

「紬希? ただいま」
紬希の大好きな低くて甘いよく通る声だ。
「貴堂さん! お帰りなさい」
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