パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
 スラリとした立ち姿ときりりとした整った顔立ちに、お日様のような明るく爽やかな笑顔を浮かべているのは貴堂誠一郎(きどうせいいちろう)だった。
 後ろには雪真も知っているJSAの職員の姿が見える。

「君たち先に行っていて」
 JSAの職員は雪真と話したそうだったけれど、貴堂がそう言うと職員達は、はーいと返事をして店の奥に入っていく。

「偶然だな。僕はちょうど勤務の帰りで、明日が待機なのでみんな誘って食事に来たんだが、君は?」
「僕は明日休みなんです」

「雪ちゃんお待たせしました」
 入り口の植木に隠れていて、貴堂の姿が見えなかったらしい紬希は、雪真の隣に見知らぬ人がいて一瞬驚いた顔をする。

 貴堂の方も一瞬驚いたようだが、すぐ気づいて紬希に頭を下げる。
 紬希も慌てて頭を下げていた。

「貴堂さん、僕の幼なじみの三嶋紬希(みしまつむぎ)さんです。紬希、こちらは僕の上司の貴堂(きどう)さん」
 貴堂はその整った顔を柔らかく紬希に向けた。

 紬希は大丈夫だろうかと、雪真が横を見るとふわりと笑みを浮かべた紬希が挨拶をする。

「すみません、失礼しました。三嶋紬希です」
貴堂誠一郎(きどうせいいちろう)です。幼なじみといまだに仲が良いのは羨ましいな」
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