パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
 その純粋な美しさに惹かれないわけがない。

「こんな人、好きにならないわけがないだろう」

 そっと紬希の頬に触れ、柔らかく唇を重ねる。何度かそれを繰り返して、紬希が慣れてきた頃合に唇を優しく何度も吸う。甘くて優しいキスは愛おしい気持ちがとても伝わる気がした。

 腕の中にもたれかかってくるその重みが嬉しい。
 少しずつ、紬希の息が乱れていくのも。

「紬希も心を乱されたかもしれないけれど、僕だって乱されている。空港で僕の腕は拒否したのに、花小路くんには平気だし、今日も知らない間に人見知りの紬希が門脇と仲良くなっているし」

「乱れるんですか?」
「むちゃくちゃ乱れるよ。ただ、それを理性で抑えることに慣れているだけだ」

 紬希がひょい、と顔を覗くと少しだけ拗ねたような貴堂の顔があって、見たことのないその表情につい、紬希は貴堂の顔に手で触れてしまった。

「貴堂さんが心乱れるなんて、信じられないわ」
「僕だってとても心が乱れるよ。好きな人には」
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