パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
 ついぽろっと出てしまったその言葉には貴堂が苦笑した。

「キャプテンはいらないから……」
「失礼しました」

「またね。三嶋さん、お会いできてよかった」
 貴堂のその笑顔はとても自然で、そこに好奇心のような姿が見えなかったことが紬希を安心させた。

「はい、こちらこそ」
 だから紬希もそう言って笑顔を返せたのだ。

 貴堂の颯爽とした後ろ姿をそれぞれの思いで、紬希と雪真は見送ったのだった。

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