パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
 車は高速道路を降りてまだまだ走ってゆく。
 すると道路が海際へ通じていて、コバルトブルーの海が紬希の視界いっぱいに飛び込んできたのだ。
 その海を割るように橋が架かっていた。

「え? あの橋を渡るんですか?」
「そうだよ」
「すごいわ!」

 青い空と真っ直ぐに伸びる道路には二人が乗っている車しか走っていなくてまるで二人だけの世界を走っているかのような錯覚を紬希は起こしそうだ。

 そうして車は長い橋を渡る。
 それはまるで海の上を走るようだった。
 飛行機とはまた異なる景色に、貴堂も紬希もはしゃいでしまう。

「誠一郎さんっ! すっごく、すっごく綺麗です! 海ってこんなに色んな色になるものなんですねぇ。ホリゾンブルー、セレストブルー、ターコイズブルー……グラデーションがとても美しいです。それにこの橋! 海の上を走ってます」

「写真では見たことあるけど、僕も来るのは初めてだ。絶景だな」
 島と島とをつなぐ長い橋を渡ったところで貴堂は車を停めた。

 海中を真っ直ぐに伸びる橋にどこまでも青い空とブルーのグラデーションを見せる海。白い砂浜が目にまぶしく、二人に影を作る緑の木までまるで絵の様だった。
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