パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
「すみません。なんだか恥ずかしい……」
「いえ。そんな風に嬉しそうに美味しいと言って食べて頂けるのはとても嬉しいですよ。ああ、だから花小路くんは君と食事に行きたがるんですね」

 紬希はいつまでも貴堂の話を聞いていたくなった。
「さて、いつまでも紬希さんを拘束していてはいけないな。そろそろ帰りましょうか」
「はい」

 そう貴堂に言われて素直に紬希は頷いたけれど、この時間が終わってしまうのはとても残念なことだ。
 紬希は行きと同じように貴堂に抱きあげられて車の助手席に乗せられた。

──ええと、これは本当にこれでいいのかしら?

「すみません……」
「いえ?車高が高くて乗りにくいでしょうから」
 行きと同じようににこりと笑われる。

 その笑顔に紬希は何も言えなくなった。
 それはそうかもしれないけれど。

 貴堂は気を付けてドアを閉めてくれて、自分も運転席に回る。
 そうして、エンジンをかけ車を出すのかと思ったら、貴堂は少し考えるような顔をしているのだ。

「紬希さん……」
「はい」
 この数時間で紬希は抵抗なく貴堂と話せるようになっていた。
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