パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
 その見た目だけではない、思慮深く泰然としていて懐の深いところや他人をよく見ているところなどが本当に魅力のある人なのである。
「良かった……」

 本当に心から安心したような声が聞こえて、紬希もつい運転席を見てしまうと、貴堂はとても優しい顔で紬希のことを見ていた。
 その深い瞳の色に紬希はどきんとしてしまう。

──どうして、すごく見てるのかしら?

「紬希さん、僕と交際して頂けませんか?」
「は……い?」

 本当に思いがけない、想像もしていなかったことを言われて、紬希は言葉を失ってしまった。
 とても素敵な人だとは思うけれども、交際……?

「交際……って、なんですか?」
 思っていたことが思わず口からこぼれてしまった紬希だったのだ。

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