見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

 と、すくい上げるように私の左手が取られる。

 胸の高さに、やけにうやうやしく持ち上げたそれに、稔くんが顔を近づける──そして、唇が触れた。薬指の指輪に。

「明花を愛しています。俺の、本当の奥さんになってくれますか?」

 穏やかな、かつ真摯な声が、私の頭と心にすうっと染み込んでくる。そこから、嬉しさと幸せがじわじわと全身に広がっていく。

 私が言うべき言葉は、ひとつしかない。

「はい、もちろん」

 自然に笑みを浮かべながら答えると、稔くんの顔にも、ふわっという感じで、柔らかな笑みが広がった。
 そして、やはり自然に互いの顔が近づき、キスを交わした。誓いの口づけのように。


 ◇ ◇ ◇


 カーテンを開けると、秋晴れの空が広がっていた。
 時計のアラームが午前7時を告げる。

 寝室になっている部屋の扉を開けて、そこそこに大きな声を響かせた。

「はい、みんな起きてー時間よー」

 掛け布団がもぞもぞと動くが、もちろんその程度で起きはしない。部屋に足を踏み入れ、一番大きな布団を一気にはぎ取った。

「ほら起きて、お父さん!」

 敷布団の上で丸まった体が、うぅんと呻く。
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