見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
「花菜も明人も早く起きなさい! 今日は運動会でしょ」
夫を挟んで両脇に寝転がる、小さな体が揃って頭をもたげる。
今日は、子供たちが通う幼稚園の、運動会当日。
数日前までの予報では天気に不安があったけど、幸いにも気持ちよく晴れてくれた。5時起きでお弁当を作った甲斐があるというものだ。
いまだ布団の上でゴロゴロしている三人に対し、両手を打ち合わせて急かす。
「はいはい、いいかげんに起きないと朝ごはん片付けちゃうわよ〜」
と言った途端、小さな二人が同時に飛び起きた。
「それはやだ」
「やだ!」
そしてバタバタと部屋を飛び出て、洗面所に走る。ひとり残された夫のそばに座り、肩を優しく叩いた。
「おはよう、稔くん」
「……おはよう、はるちゃん」
夫婦二人の時にはいまだに、こう呼び合っている。眠そうに眼をこする夫の様子に、私はふふっと笑った。
たぶん、前日の興奮で眠れない子供たちに付き合って、夫も昨夜は遅くまで眠れなかったのだろう。こんなに彼が子煩悩になるなんて想像しなかったから、子供への溺愛ぶりには呆れてしまう時もあるけれど、嬉しくも思う。
「毎日お疲れ様」
髪を撫でながら言うと、いきなり引き寄せられ、布団に倒れ込まされてしまった。正確に言うなら、上半身は稔くんの胸に倒れて、そのまま抱きしめられる。
「はるちゃんもお疲れ。いつもありがとう」
「……子供たち、戻ってきちゃうよ」
そう言いつつも、自分から離れようとはしない。彼の腕の中はいつでも、私にとって一番、安心できる温かさをくれるから。
顔と目線を上げると、稔くんの視線とぶつかる。
軽く笑い合うだけで幸福感が心を、そして全身を満たしていく。
──ああ、幸せだな。
心の底から感じる中、どちらからともなく近づいた唇が、優しく重なった。
- 終 -


