見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

 ……体を洗っている最中、どうしても、胸元や乳房に散った赤い点が目についた。
 見るたびに、そこを吸われて愛撫された昨夜の時間を思い出してしまって、顔を覆いたくなった。

 結婚したのだから、抱かれないままで過ぎていくと本気で思っていたわけじゃない──けど。

 あんなふうに抱かれるとは思わなかった。すごく……ゆっくりと執拗に、優しく甘い感じで、されるなんて。
 まるで、本当に愛されて結婚したのだと、錯覚させられるような。

 そんなはずはないのに。

 この結婚は、利害の一致。親にうるさく言われないため、お互いの会社の業務提携のため。
 ある程度は好意を持っていてくれているとしても、それは幼なじみとしての感情であって、男女の愛情じゃない。

 稔くんはきっと、誰が相手でも、あんなふうに抱く人なんだ。

 そう自分を納得させながら、心の底には、そこはかとない寂しさも感じた。

 ……だめよ、明花。
 特別に、本当に愛されたいなんて、わがままなことを考えたら。

 バスタオルにくるまり、ぶんぶんと頭を振っていたら、洗面所の扉が開いた。

「あ、おはよ」
「おっ、おはよう」

 稔くんが何も身に着けないまま、入ってきたのだ。当然ながらシャワーを使いに来たのだろう。

 昨夜さんざん見たのに、シチュエーションが違うせいかひどく恥ずかしくなって、タオルで顔を覆う。ちなみに私は、昨日の朝に着ていたブラウスとスカートを、すでに身に着けている。
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