見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

「来月さ、うちで集まりがあるんだ」
「うち?」
「実家、本家で。親族一同が集まるってやつ」

 あっさりとした調子で稔くんは言ったが、私は、数秒の間を意味を理解するのに費やし、理解してからは血の気が引いた。
 彼の実家ということは、イコール、坂根家の本家だ。そこで親戚一同の集まりがある、ということは──

「……パーティーをする、ってこと?」
「まあ、そうなるかな。実は、そろそろ重役入りの覚悟をしとけって、親父に言われてて。部長になってからの新規開拓数とか評価されてるみたいだし、早かったら来年度早々には専務着任が決まるかもしれない」
「えっ、そうなの。すごい」

 社長の息子──とはいっても実子ではないし、仮に実の子であっても30過ぎで重役のひとりに名を連ねるなんて、そう簡単にできることではないはず。稔くんの仕事ぶりと人柄がそれなりに評価されてのことだろうと思うと、私も嬉しい。
 なんといっても、契約上とは言え夫婦の間柄なのだし。

 嘘のない私の賞賛に、稔くんは「ありがとう」とにっこりと笑った。

「それで、どっちかっていうと今はこっちが本題なんだけど……まあ当然なんだけど夫婦で参加しろ、って連絡が来てさ」
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