サクラ、咲く


「今日の予定は?」


「・・・特にないけど」


「じゃあ俺、此処に居る」


「ちょっと、待ちなさいよっ」


「あ゛?」


「凄んだってダメだからねっ
アンタはお礼のご飯も食べたんだから
早々に帰りなさいよっ」


「嫌」


「・・・は?」


「咲羅、あんなにビビって泣いただろ?
そんな咲羅を放って帰るとか、無理」


小さく頭を振る翔樹の仕草に見惚れる・・・じゃなくてっ


「イヤイヤイヤイヤ
可愛く言えば許されるとか思ってないわよね?」


「高校生の男を掴まえて
“可愛い”とか言うなよ」


「・・・は?」


翔樹の頭はどうなっているのだろうか
着地点のない堂々巡りは結局

何故か機嫌の良い翔樹の頬を見てやめた


「宿題見てあげようか?」


「あ゛?」


「あ〜、D組はないわよね、フフっ」


「んだとっ!」


一人分スペースを空けて座っていたはずの翔樹は
いつの間にかピタリと寄り添っていて

傾きながら圧をかけてきて重い


「ちょ、重い、デブっ」


「全然太ってねぇ」


「骨が折れるっ」


「骨粗鬆症か?スカスカか?」


「モォォォォ」


やっぱり痺れを切らすのは私で
どちらともなく吹き出して

最後は笑っていた


「買い物に行って来ようかな」


「なんでだよ」


「私一人ならなんとかなるけど
成長期のお坊ちゃんには食材が足りないのよ」


「テメェ、咲羅」


「なに?間違ってる?」


「お坊ちゃん言うな」


「お子ちゃま?」


「許さねぇ」


翔樹の瞳がギラっと輝いて見えた瞬間
視界が反転していた


「・・・っ」


「お子ちゃまに組み敷かれるのはどんな気分だ?」


「・・・な、によ」


押さえつけられた両手首と
間近に見える翔樹の熱っぽい双眸に囚われる


「子供はこんなことしないからな」


「・・・っ」



そう言ってオデコにそっと触れた唇は





微かに震えていた





















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