恋に落ちたら
お腹が満たされたせいか、緊張が少し解けたせいか、私はどこに行くのか分からないままに手を引かれ歩いていた。

しばらく歩くとプラネタリウムに着いた。

「東京だと星が見えないだろ?」

私と悟くんは小さな頃何度か両親に連れられ旅行に行ったことがあった。うちの別荘に行くことも何度かあり、夜になると野辺山に連れていってもらったことを思い出した。とても綺麗だったと懐かしくなった。
悟くんは私の手を離し、さっとチケットを購入するとまた手を取ると施設の中へと進んだ。

「またみのりと星空が見たいと思っていたんだ。あの頃はガイドの話の途中で寝てただろう? 何度行っても途中で寝てしまうみのりが可愛かったよ」

また可愛いって言った!
私のことを甘やかすような言葉に胸が高鳴る。

私たちは隣に並びリクライニングされた椅子に座ると程なくして照明が落とされた。
ガイドの説明が始まり夏の大三角形をはじめとした今の星空の説明が始まった。
夜空の中での探し方やその星にまつわる物語など改めて聞くととても面白い。あっという間の1時間だった。

照明が付き、席を立とうとすると手を繋いでいたことを思い出した。
あのままずっと繋いでいたことに気がつきハッとした。
繋いでいることを忘れるくらい普通だった?
この前まで男の人と手を繋いだこともなかったのに慣らされてる?
私は繋いで手を凝視していると、悟くんは笑いながら「ほら行くよ」と言って手を引っ張り立たせてくれた。

「どうだった? 最後まで聞いた感想は」

「すごく面白かった。実際に自分でも探してみたいと思いました」

「東京は明るいから見える星が限られているからなぁ。そのうちまた野辺山に行けたらいいな」

そう言うと歩き出した。
私も思わずうなずいてしまった。
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