恋に落ちたら
「そういえば徹くんは今何をしてるの?」
「あいつは家業を継ぐべく田神電子で下働きしてるよ」
「医療系の電子機器だよね?」
「あぁ」
「悟くんが薬剤師になったから後継者は徹くんになるの?」
「そうだな。あいつは機械関係に強いから。それに経営学も勉強してるから」
後を継ぐために勉強して入社したなんてすごいな。
私なんて普通の一般社員のように日下部製薬に入社した。ひとりっ子なのに後を継ぐなんて考えてもなかった。両親からもそういった類いの話はされたことがなかった。
この前のお見合いで急に悟くんの話が出て心底驚いたくらい日下部製薬の将来に疎かった。
私がついため息をついてしまうと心配そうに顔を覗き込んできた。
「今思えばあの頃はかわいかったな、と思うくらいだよ」
私のため息は悟くんに対してでも、徹くんに対してでもない。
自分の呑気さに出ただけだ。
「家族ごっこのことは悪かったと思ってるけどため息は違うの。みんな将来を考えて動いているのに私はのほほんと実家の会社にただ就職しただけでなんの役にも立たないなって。徹くんみたいに継げるだけの度量もないし、悟くんみたいに手に職もない」
私はまた大きなため息を吐いた。
「後継者って身内だからうまくいくものでもないだろう? 今の時代、親の後を継ぐなんて難しくぞ。徹も頑張っているが容易ではない。だからみのりのお父さんもみのりの意思を尊重したんだろうな」
今思えば、小さな頃から厳しく育てられてきたと思う。特にお金に関しては厳しく、そのためバイトもしていた。だから同じ学校の友達よりも社会経験が多かったと思う。その社会経験が働き始めて役に立ったと思うが上に立ちたいという気持ちにはならなかった。だから父もトップに立つ格じゃないと思ったのかもしれない。
「あいつは家業を継ぐべく田神電子で下働きしてるよ」
「医療系の電子機器だよね?」
「あぁ」
「悟くんが薬剤師になったから後継者は徹くんになるの?」
「そうだな。あいつは機械関係に強いから。それに経営学も勉強してるから」
後を継ぐために勉強して入社したなんてすごいな。
私なんて普通の一般社員のように日下部製薬に入社した。ひとりっ子なのに後を継ぐなんて考えてもなかった。両親からもそういった類いの話はされたことがなかった。
この前のお見合いで急に悟くんの話が出て心底驚いたくらい日下部製薬の将来に疎かった。
私がついため息をついてしまうと心配そうに顔を覗き込んできた。
「今思えばあの頃はかわいかったな、と思うくらいだよ」
私のため息は悟くんに対してでも、徹くんに対してでもない。
自分の呑気さに出ただけだ。
「家族ごっこのことは悪かったと思ってるけどため息は違うの。みんな将来を考えて動いているのに私はのほほんと実家の会社にただ就職しただけでなんの役にも立たないなって。徹くんみたいに継げるだけの度量もないし、悟くんみたいに手に職もない」
私はまた大きなため息を吐いた。
「後継者って身内だからうまくいくものでもないだろう? 今の時代、親の後を継ぐなんて難しくぞ。徹も頑張っているが容易ではない。だからみのりのお父さんもみのりの意思を尊重したんだろうな」
今思えば、小さな頃から厳しく育てられてきたと思う。特にお金に関しては厳しく、そのためバイトもしていた。だから同じ学校の友達よりも社会経験が多かったと思う。その社会経験が働き始めて役に立ったと思うが上に立ちたいという気持ちにはならなかった。だから父もトップに立つ格じゃないと思ったのかもしれない。