恋に落ちたら
悟くんがグラスに入れたアイスティーを運んできてくれ、買ったケーキもお皿に乗せてきてくれた。
私の選んだナポレオンパイと悟くんのチーズケーキが並ぶとコーヒーテーブルがそれだけでいっぱいになった。

「ありがとうございます」

「飲み物だけでごめんな」

「ううん」

私は緊張から喉がカラカラで早速口をつけると香りが鼻から抜ける。

「美味しい!」

「良かった」

「どうしてこんな美味しいの?」

「うーん、ちょっとしたコツかな。美味しい茶葉をじっくり開かせること。それにすぐに冷えるよう大きな氷を使うことかな」

そう言われたらグラスに大きな丸い塊の香りが入っていた。お酒を飲むようなまんまるの氷が確かに印象的。

「さっきたくさん作っておいたからお代わりもあるよ」

「ありがとうございます」

悟くんが出してきたアルバムを2人で並んで見ていると私が忘れていたことを思い出させた。
悟くんとおままごとしているものや並んで昼寝している写真、プールで浮き輪を押してもらっているものまであった。
悟くんはいつでも笑顔で私の隣でピースして写っていた。今のようにサラサラヘアではなくて子供らしいスポーツ刈りだった。
いつの頃からかラナや弟の徹くんが写真に写っていたが、私と悟くんは相変わらず仲の良さそうで同じポーズをしたりしていて楽しそうな雰囲気が伝わってきた。

悟くんが小学校を卒業する頃からか写真が急激に減り、中学の頃からは私が写る写真がなくなっていた。

「懐かしかっただろう? 俺は一緒におままごとしたり、家族ごっこさせられてたって思い出したよ」

「家族ごっこ?」

「あぁ、ある時は旦那さん。ある時は赤ちゃんの時もあった。流石に恥ずかしくて断るとみのりは泣いてせがんだんだ。だから仕方なくやったこともあったなぁ」

「え? ごめんなさい」

確かに私より5歳も年上の彼に家族ごっこをさせるなんて子供ながらにひどい。小学生の男の子には恥ずかしかったんだろうなと思うと申し訳ない気持ちになった。

「それがさ、徹にはせがまないんだよ。みのりより1つ下なんだからその2人でやればいいのに毎回俺を指名してきてさ。徹はやりたさそうだけど誘われないから強引に入ってきてラナの友達役だったよ」

「ラナの友達役って……」

「ま、いわゆるペットだな」

なんだか悟くんにはもちろんのこと、徹くんにまで申し訳なく感じてきた。
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