独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで

真意を探ろうと観察していたところ、瀬尾の目に苛立ちが浮かんでいるのに気が付いた。

（怒ってる？　この態度は強がりなのか？）

晴臣を睨んでいた瀬尾が急ににやりと笑った。

「そう言えばこの前瑠衣に会った」

「今は舟木美帆の件を話してる」

「まあいいだろ、聞けよ。瑠衣は俺を見て本当に驚いていたな。明らかに動揺していた。仕方ないよな、初めての男は忘れられないって言うからな」

明らかに晴臣を挑発する発言だった。

相手にするのは馬鹿だと理性では分かっていたが、妻のことになると残念ながら晴臣も我慢が効かない。

「心配するな。俺が昔の男なんて考えないように大切にしているから。先日“偶然”会ったのは聞いているよ。だが大した感想は無かったようだ。既にお前と会ったことは忘れてるんじゃないか？」

瀬尾は晴臣の挑発にまんまと乗り顔を歪めた。

「だいたいなんで瑠衣がお前に未練を持ってると思うんだ？」

「は？　それは俺があいつの初めての……」

「だから何だ？　冷静に考えてみろよ。将来神谷ホテルを率いる俺と一社員のお前、女だったらどっちを選ぶ？」

普段の晴臣なら決して言わない言葉。しかし今瀬尾を崩すには必要だった。