独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで

案の定彼は顔を赤くして傍から分かる程に怒り始める。

(プライドの塊のような男だからな)

他人を見下すのに自分が下に見られるのは受け入れられない。

「ふざけるな! 別に俺は瑠衣なんてどうでもいいんだ!」

「……それで?」

「お前も瑠衣も間抜けだよ綺麗ごとばっかで。初めから気に入らなかったんだ。経営者の息子だからって特別扱いしないで欲しい? 笑わせるな! 瑠衣も名門料亭の娘だってのに、俺がそのことを誰かに言うと親の話はやめてとか言って嫌がった。じゃあ何のためにつまらない女と付き合ったんだよ」

瀬尾の言葉は意味不明な点があったが、はっきりしていることもあった。

「つまり歪んだコンプレックスで俺と瑠衣に逆恨みをしていたって訳だな?」

「勝手に決めつけるな!」

「ではなぜ俺に船木美帆を近づけた? 瑠衣との関係についても俺に嘘の情報を伝えていた。それは俺たち夫婦に亀裂を入れる為じゃないのか?」

まんまと瀬尾の企みにはまりそうになった自分が情けない。

しかし事情を知ってみたら実に下らない。
ただ妬むだけならいいが、舟木美帆という第三者を利用したのは悪質だ。

何より瑠衣に手を出そうとしたのが許し難い。
< 103 / 108 >

この作品をシェア

pagetop