独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
(食事中は会話が弾むといいな。今日の晴臣さんはいつもよりおしゃべりだし)

夫婦の距離が少しでも近づくといいのだけれど。

でも……と瑠衣は先ほどの晴臣の表情を思い出した。

一瞬彼が顔をしかめたように見えたのだ。不快なことが有ったとでも言うように。

何か気に障ることを言っただろうか。思い出してみたけれど、特に問題はなかったと思う。

(……気のせいかな)

最近過剰に彼の反応を気にし過ぎているのかもしれない。

瑠衣はそんな自分に苦笑いしながら、キッチンに向かった。


夕食の席ではそれなりに会話があったが、盛り上がったかとまでは言えない気がする。

晴臣は終始笑顔だったけれど、ふと難しい顔をするのを何度か見たから、彼は無理をしているように感じた。

(疲れてるだろうし仕方ないよね)

本来の彼は記念日を重視しないタイプなのかもしれない。妻に合わせているだけだとしたら心底楽しむのは無理だろうし。

それにしても、自分は夫の趣味嗜好を理解していないのだと改めて実感した。

(会話が弾まないのはそのせいなのかも)

お見合い結婚の夫婦だ。焦らずもっと時間をかけて歩みよるべきなのか。
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