独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
(今日の晴臣さんはいつもと違う)

普段は仕事の詳細なんて家では話さないのに、今は饒舌だ。

(よほど仕事が大変だったのかな……当たり前だよね、昨日の朝早く出て丸一日以上働いていたんだから)

精神的にも肉体的に疲弊しているはずだ。

それなのに瑠衣は記念日のことばかり気にして、晴臣の体調を思いやれていなかった。

(自己中だったな……なんだか情けない。もっと晴臣さんの立場になって考えなくちゃ)

夫に悲しかった気持ちを伝えようと思っていたけれど、そんな気はなくなった。

(彼が疲れてる今じゃなくてもいいよね)

瑠衣は晴臣を見つめて微笑んだ。

「私は大丈夫だから気にしないで。仕事の対応を優先したのは当然のことだもの。お祝いは別の日にしたっていいんだから」

「……そうか」

晴臣は何か言いかけたものの、結局口を閉ざした。

「すぐに夕飯の用意するね。晴臣さんお腹は空いてる?」 

「いや、寝不足のせいかそこまでは空いてない」

「それならサッパリしたものにした方が良さそうね」

瑠衣は急ぎ足で寝室に向かい、部屋着に着替えをした。

(今夜は食事をしたらゆっくり休んで貰おう)

予定はがらりと変わってしまったけれど、これでいいんだ。
< 13 / 108 >

この作品をシェア

pagetop