独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
晴臣のスマホに表示されていた“舟木美帆”という女性がなぜだかとても気にかかるのだ。

(晴臣さんからは一度も聞いたことのない名前だけど、こんな夜遅くに連絡して来るなんて、仕事関係じゃないよね)

晴臣には専属に秘書が付いていないし、社内ということも無さそうだ。

それなら友人か、親類か。

(でも親戚に舟木さんなんていなかった……)

となるとやはり晴臣個人の繋り。

「……はあ」

つい溜息が漏れた。夫の女友達との付き合いを否定するつもりはないけれど、モヤモヤする。

(友達に焼きもち焼いても仕方ないのに)

自分はそんなに嫉妬深かっただろうか。

夫が女友達とどんな付き合いをしているか、実際のところは何も知らないのに勝手に妄想を膨らませて不機嫌になっているなんて。

(あーあ、最近本当に余裕がない…)

その夜はなかなか寝付けず、寝返りばかり打っていた。


翌朝。六時に起きて身支度を整えリビングに行くと晴臣が昨夜眠っていたソファに座り、ミネラルウォーターを飲んでいた。

髪が濡れているから、シャワーを浴びたばかりなのだろう。

「おはよう」

彼は瑠衣に気付くと、笑顔で挨拶をして来た。
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