独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
「ありがとう。心配させてごめんね、実は……」

今なら穏やかに気持ちを打ち明けられる。
そう思い続きを口にしようとしたとき、晴臣のスマートフォンが大きな音を立てた。

「悪い、サイレントにするの忘れてた」

晴臣は瑠衣を気遣うようにそう言い、スマホを手に取る。

そのとき瑠衣にも画面に表示されている名前が見えた。

(舟木美帆ってこの前深夜に電話をして来た人だ)

せっかく穏やかになっていた心がたちまちざわつく。

晴臣は応答せず呼び出しが終わると、スマホを少し操作して瑠衣の反対側に放置した。

「出なくてよかったの?」

「ああ、それより瑠衣の……」

晴臣は先ほどの話しの続きをしたかったようだけれど、瑠衣は彼の言葉を遮った。

「ごめんなさい。今画面が見えたんだけど、舟木美帆さんって晴臣さんとどんな関係の方?」

「え……取引先の社員だが」

「晴臣さんが直接やり取りしているの?」

「彼女は嵩原製菓の専務秘書だ。俺がやり取りするのは専務の方だ」

瑠衣は胸の奥に不快感が生まれるのを感じていた。

(取引先の秘書がどうしてプライベートの番号に連絡して来るのよ)
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