独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
瑠衣の初めての恋人、瀬尾恭二。二度と会いたくないと思っていた相手だ。

「やっぱり瑠衣だ。ここで会うとは思わなかったから驚いたよ」

声が出ない瑠衣に、瀬尾が笑顔で話しかけて来る。

その自然な態度が信じられなくて、気分が悪くなっていく。

「瑠衣の知り合い?」

那々が瀬尾をちらっと見たあと、瑠衣に聞いて来た。

「あ……うん。昔の知り合い」

ようやく声が出たけれど、動揺は消えてくれない。それなのに瀬尾は当たり前のように、瑠衣たちのテーブルの空いていた椅子に座ってしまう。

図々しいその態度に、瑠衣は思わず眉を顰めた。

「瑠衣、紹介してくれよ」

瀬尾は那々の方を見ながら言う。その目はまるで獲物を狙うように鋭く、執着のようなものを感じるものだ。

(まさか、那々を狙っているの?)

嫌悪感で体が冷たくなるのを感じた。

会ったばかりなのに信じがたいが、惚れっぽくて移り気な彼ならあるのかもしれない。

瀬尾恭二と出会ったときの出来事が一気に蘇って来る――。
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