独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
彼とは大学一年の夏に知り合った。
同じ大学で友人の友人といった関係だったが、瀬尾は初対面にも関わらず、一目惚れしたと言い瑠衣に猛烈なアプローチを仕掛けて来た。
それまで男性と付き合った経験が無かった瑠衣は、彼の積極性に翻弄されるばかり。
しかも彼は有名な遊び人という評判で、信用することは出来ない相手
。
警戒していた瑠衣は、当然付き合えないと拒否していた。けれど瀬尾はとても諦めが悪く、断られても平然と近づき誘いをかけてくる。
ときには瑠衣が恥ずかしくなるような甘い言葉を囁いたり、思いもしない、それでいて女心をくすぐるサプライズを仕掛けて来たリ……そんな風に二月も過ごしているうちに、いつの間にか絆されていた。
秋の始まる頃、瑠衣は瀬尾の告白を受けて、ふたりは恋人同士になった。
一旦心を許すと、どんどん瀬尾に惹かれていった。
恋愛経験が豊富で遊び慣れた彼の言動は瑠衣にとって新鮮で、大人の世界を除いたかのように刺激的な毎日だった。
初めてのキスもセックスも瀬尾が相手だ。不慣れな瑠衣をリードしてくれる彼を頼もしく感じ、いつの間にか依存するようになっていた。
彼は就職が決まっており時間に余裕があったから、いつも瑠衣の側に居てくれた。
幸せだと感じていた。初めての恋に舞い上がっていたこともあるだろう。
だから彼の不振な行動に少しも気付くことが出来なかった。
後になって振り返るとおかしな点は沢山あったのに。
一晩中連絡が取れないことが週に何度もあり、約束はドタキャンされる。彼の家族には会わせて貰えない。就職先についても詳しい話はしてくれない。