独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
「大学生の頃ね、ほんの半年程度」

状況的に否定しても無駄なのが分っているので正直に答えた。

「へえ、知らなかった。瑠衣ってあまり恋バナしないからね」

「そうなんですか? いつの間にか秘密主義になったんだな」

瀬尾が意外そうに眉を上げる。

「昔は思ったことが直ぐに顔に出てたのにな」

やけに甘い顔を瑠衣に向けて楽しそうにする瀬尾は、傍から見たら優しそうな好青年だ。

本性を知らない那々が興味を持ってしまわないか心配になる。

過去の瑠衣も瀬尾の表面だけしか見ることが出来ずに恋をしてしまったのだから。

しかも那々はパートナーが欲しいと言っていたし、お酒も飲んでいるのでガードが甘くなっていそうでタイミング悪い。

しかし瑠衣の不安とは裏腹に、那々の態度は結構ドライだった。

「付き合ってたのは二十歳そこそこの頃でしょ? 五年もあれば女は変るもの不思議はないですね」

どう見ても瀬尾の甘いマスクに惹かれている様子はない。

しかもさり気なく腕時計に視線を落とし、「そろそろ帰ろうか」と言い出したのだ。
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