独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで

「このスパゲッティ美味しいな」

「ふふ、ありがとう。前から気になっていた有名シェフのレシピを試してみたの」

「瑠衣は和食だけでなく洋食も得意だよな」

「洋食の方がよく作るかも。料亭の娘だから和食ってイメージがあるのかもしれないけど」

「言われてみれば、朝はパンだよな」


思った以上に穏やかな食卓だった。

ただお互いいつ切り出そうかタイミングを伺っているのは確か。

結局食後のコーヒーとデザートのタイミングで瑠衣が動いた。

「今日は、ちゃんと話そうって言ったでしょ?」

「ああ」

「その前に言っておきたいんだけど、今日の昼過ぎに晴臣さんが女性といるところを見かけたの」

それまで落ち着いていた晴臣が、初めて僅かな動揺を見せた。

「どこでだ? 瑠衣が近くに居たなんて全く気付かなかった」

彼は女性と会っていたのを知られたことよりも、瑠衣の存在に気付かなかったのを気にしている様に見えた。

「晴臣さんの会社の近くで。あの辺りに空地があるんだけど、今度オフィスビルが建つ予定だそうなの。それで那々の補助で測量をしていたんだけど」

瑠衣の説明を聞いた晴臣は心当たりあるのか、あ、と口を開いた。
< 88 / 108 >

この作品をシェア

pagetop