独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
「このスパゲッティ美味しいな」
「ふふ、ありがとう。前から気になっていた有名シェフのレシピを試してみたの」
「瑠衣は和食だけでなく洋食も得意だよな」
「洋食の方がよく作るかも。料亭の娘だから和食ってイメージがあるのかもしれないけど」
「言われてみれば、朝はパンだよな」
思った以上に穏やかな食卓だった。
ただお互いいつ切り出そうかタイミングを伺っているのは確か。
結局食後のコーヒーとデザートのタイミングで瑠衣が動いた。
「今日は、ちゃんと話そうって言ったでしょ?」
「ああ」
「その前に言っておきたいんだけど、今日の昼過ぎに晴臣さんが女性といるところを見かけたの」
それまで落ち着いていた晴臣が、初めて僅かな動揺を見せた。
「どこでだ? 瑠衣が近くに居たなんて全く気付かなかった」
彼は女性と会っていたのを知られたことよりも、瑠衣の存在に気付かなかったのを気にしている様に見えた。
「晴臣さんの会社の近くで。あの辺りに空地があるんだけど、今度オフィスビルが建つ予定だそうなの。それで那々の補助で測量をしていたんだけど」
瑠衣の説明を聞いた晴臣は心当たりあるのか、あ、と口を開いた。