愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)

「王都へ戻った宝玉姫(・・・)は、まるで別人のように(・・・・・・)王子の求婚を受け入れ、故郷に残った姫君(・・)は、やがて幼馴染の少年と()け落ちすることとなった」

 レグルスがそこに込めた含み(・・)に、シャーリィは全く気づかなかった。
「……そう。お母様の恋は、見込みのない恋だったのね……。だから、(あきら)めてお父様の妃に……」

 シャーリィが気づいていない(・・・・・・・)ことに気づきながら……レグルスは、あえて指摘しようとはしなかった。
 それは確証のない話だ。誰がどれだけ疑おうと、当事者である(ふた)りにしか、真実は明かせない……そういう種類の話なのだ。
 ならば、何も疑わずにいるシャーリィの心を、いたずらに(さわ)がせることもない。

「そう。これが皆が噂する、マリア・イーリス姫とその想い人との真実。マリア・イーリス姫は、想いを告げる前に(すで)に失恋していたんだ」
「そうだったの。でも、だったら、私とお兄様が兄妹じゃないというのは……?」
 レグルスは再び躊躇(ためら)うように語りを止めたものの、やがて決心したように口を開いた。
< 93 / 147 >

この作品をシェア

pagetop