ずれと歪み

ゆか⑥

冬休みに入ると案の定、音楽の先生は僕を呼び出した。

「受験勉強は捗っているかしら?」

捗るも捗らないも3日前に冬休みに入ったがりで、終業式にも僕は同じことを話したばかりだ。

ましてや今日はクリスマスだ。

せっかくなので冬休みの宿題を手伝ってもらった、手伝ってもらったという表現でいいだろう。

正確には筆跡でバレてしまうのでわからないところは彼女に答えを教えてもらった。

職員室の扉を誰かがノックすると一人の女の子が入ってきた。

先生を見ると手を振り先生も彼女に手を振ると近寄って行った。

どうやら今年の卒業生とのことだった。

先生は彼女に僕を紹介した。

彼女は僕の筆箱を見るとそれは私が選んで仕入れたのよと微笑んだ。

「あなただったのね?先生が私のアルバイト先に来てくれてあなたの話をしてくれたわ。その筆箱もどれがいいか一緒に考えたの。」

ゆかちゃん、今コーヒーを淹れるからそこに座って待っててと先生は言った。

「あなたは音楽の授業で口パクらしいわね」

彼女はそう言って笑った。

「あまり自分の歌を聞かれるのが好きじゃなくて」

歌を歌うことだって絵を描くことだって自分が感じていることを表現するのは楽しいことだったりもするわよ。

彼女は美術部に入部していた。

そういえば音楽室に何枚かの絵が飾られていたのをおもいだした。

模写が上手な人は沢山いるが、彼女の場合は目の前にあるものを独自の感性で描いていた。

しかもそれが無意識であり、彼女には人とは違うように見えていたのだ。

あの川の絵もそうだった。

先生は三人分のコーヒーを淹れて戻ってくると、彼女の話をした。

彼女は合唱の練習の際、アルトでありながらも男子の横でテナーを歌っていたそうだ。

そこでも先生は彼女の口元に耳を寄せ立ち止まって聞いていたようだ。

先生も先生で変わり者だと思った。
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