先輩からの卒業 -after story-
「……奈子?」
黙り込む私の顔を巧くんがそっと覗き込む。
きっと、今の私は加恋先輩への劣等感で嫌な顔をしてる。
そんな顔を見られたくなくて、巧くんと逆方向に身体を向けた。
巧くんは私と加恋先輩を比べたりしない。
わかってるのに……。
「奈子?……もしかして、嫌だった?」
巧くんの手は乱れていた私の髪を掬い、そっと耳にかける。
無理に顔を覗きこもうとはしてこなくて、その優しさに胸がギュッと締め付けられた。
「嫌じゃないです……ただ、」
「ただ?」
「今ので終わりですか?」
私の言葉に巧くんは黙り込む。
今、どういう表情をしているのだろうか?
確認したいけど、怖い。
数秒の沈黙が続いたあと、
「え、口にした方が良かったってこと?」
と、返事が返ってきた。
そうなんだけど……。
言葉にされると恥ずかしくて、咄嗟に飛び起きて訂正の言葉を口にした。
「そ、そういうことじゃなくて」
ああ、私ってなんて面倒くさい人間なんだろう。