先輩からの卒業 -after story-
「そんなことないですよ!」
奈子は合鍵を手にギュッと握ったまま、そう口にした。
「あ、敬語使っちゃった……」
気が緩んだのか、奈子の口から飛び出した「そんなことないですよ」という言葉。
自ら申告するあたりが奈子らしい。
えっと、確かさっきまでがファーアウトだったからこれで5回目だ。
「じゃあ、今ので5回目だからペナルティだな?」
「で、でももう17時過ぎましたよね?」
奈子の言うとおり、今は17時30分。
すでにゲームの時間は終わっている。
でも、俺にも“ご褒美”あってもいいよな?
「いやー…でも、よくよく考えたら判定甘すぎたよな?」
「い、今さらずるい!!」
うん、奈子の言葉が正論。
だけど、少しのルール改変を許してほしい。
ペナルティも甘めに設定するから。
「そうだなー。じゃあ、帰るまでの間、奈子が座るスペースはここな」
そう言いながら俺は、足の間にできた小さなスペースを指差す。
「……そ、そんなっ」
俺はそこに焦る奈子を誘導した。
すっぽりと収まる身体は熱を持っていて熱い。
後ろからだと顔が見えないのが残念だな。