はじまりは雨のなか
急な大雨

暑い夏には当たり前になったゲリラ豪雨。急に真っ黒な雲が夏のギラギラとしていた空を覆い大粒の雨が一気に地面を濡らし道路に水の膜が張られる。

そんな風物詩ともなったゲリラ豪雨の中、駅前のロータリーで雨宿りをしていた私は一人の男性に目が留まった。

その男性は大雨の中で冠水した道路の状態を確認しながら、水が流れていく方向のグレーチングのゴミを取り除いていた。

私は屋根のあるところから様子を見ていただけだが、こちらに向かってずぶ濡れで走ってくるスーツを着た男性の怒鳴る声が聞こえてきた。

何にあんなに怒っているのかよく聞き取れなかったけれど、大雨が降ると道が水で埋まってしまいびしょ濡れになってしまうことを怒鳴っているらしい。

『すみませんでした。気をつけてください』とでも言っているのだろう、真摯に頭を下げる様子を見て、最近の自分を見ているようで、やるせない気持ちになった。

雨が降っているのも、道路が川みたいになったのだって雨の量が多いからであってあの人のせいじゃないのに…。

それでも彼は頭を下げる。私は…システムが使い難いのもレスポンスが遅いのも私のせいじゃないし、くらいにしか考えてなかったことに気がついた。

いつも心の中で『なんで私が怒られなきゃいけないの』と、私ってば自分のせいじゃないからって不満ばかり溜めて、どうしたら相手に失礼にならないか、解決してあげられるか、とか考えもしなかったな…


近くに停まっていた車が市役所の物だったので、おそらく彼は市の職員なのだろう。
市役所にいる人って、デスクワークばかりでアームカバーとかつけてるイメージだったんだけどな…それって一昔前のドラマの世界なのかと考えていた。

こんな大雨の中で作業していて大変だな、そう思いながら雨宿りしていた。
しばらくすると雨は弱くなってきたので、私は傘をさして帰えることにしてその場を離れた。

上がった雨の帰り道に自分のミスでなくても関わりがあることに対して誠意を持って対応し、対応しきれないときには素直に謝罪が出来るようにしていこう、と考えていた。

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