しらすの彼
「どうしようかな」
 けれど私は、わざとそんな風に言って指を離すと相良さんの前を歩き始めた。

「信乃ちゃん」
「だって相良さん」
 困惑するような相良さんの声を聞きながら、振り向かずに続ける。こんなにやにやした顔、見せられないじゃない。

「私の両親に挨拶する前に、私に言うべきことがあるんじゃないですか?」
 将来の話なんて、今初めて聞いたもの。また自分勝手に話を進めようとするんだから。

 相良さんの足音が止まった。

「浅木信乃さん」
 落ち着いた、でもちょっと緊張感のある声が聞こえて、私も足を止めてゆっくり振りかえる。

 大好きな人から、大切な言葉を受け取るために。



Fin

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