夢見るだけじゃ終われない 〜恋と令嬢とカクテルと〜
『ニューヨークで臣海と知り合って、株取引の仕方なんかも教えてもらって。自分の店を持てたし金銭的にも余裕があるしで、一生こうしてニューヨークで一人暮らしを続けるのもいいかなって思ってたんだけど……茉莉と運命的な出会いをしちゃったから』
『それじゃあ、私のために日本に帰ってきたってこと?』
『今回は茉莉とのことや会社のことがあって一時帰国しただけ、またニューヨークに戻るよ』
悠は私が日本に帰国した直後から実家や久遠CEOと連絡を取り、『宝生フーズ』を救う手立てを必死に考えてくれたのだという。
同時に興信所に犬飼の調査を依頼して、揉めた場合にはすぐに攻撃に移せるよう備えてもいた。
結果、私の父の会社、『宝生フーズ』が持つ販売ルートや営業先を『株式会社乙羽』も共有することを条件とした業務提携を行い、乙羽側から資金援助を行う契約を結ぶことになった。
『KUONホテル』の一部のレストランやバーでも『宝生フーズ』との取引を開始してもらえることとなり、大企業2社の後ろ盾ができたことで銀行から融資を受けられそうだと父が喜んでいた。