クールな自称保護者様も燃える恋情は消せないようです
「お兄ちゃん……!?」

見入ってしまった。
四歳上の幼馴染、庄内剛史(しょうないたけふみ)がそこに立っていたから!

「大変お世話になりました」

私の代わりに看護師さんにお礼を言うその声がひどく懐かしくて、じわんと胸が熱くなった。
でも不思議なことに、この声、ついさっきも聞いた気がする。
救助されたあの時に――。

そっか……!
お兄ちゃんが着ているオレンジの作業着、これは消防隊員のだ。
私を助けてくれたのは、お兄ちゃんだったんだ……!

「まったく……」

お兄ちゃんは久しぶりに見ても変わらない整った顔に、怒ったような呆れたような表情を浮かべた。

「すぐに通報があったから良かったものの、煙草の不始末なんて」
「すごい! どうしてお兄ちゃんが!?」

素っ頓狂な声を上げた私に、お兄ちゃんは大きく溜息をついた。
お兄ちゃんは私の家の隣に住んでいて、小さい頃からいつも私を本当の妹のように大切にしてくれる、穏やかで優しい人だった。
私も本当のお兄ちゃんのようになついていた。

お兄ちゃんはスポーツ万能で背が高くて身体が大きかったけれど、こうして数年ぶりに前にすると、よりいっそう逞しくなった気がする。
いつもそうだ。お兄ちゃんは私よりずっと先に大人になってしまう。

私が高校三年生の頃、お兄ちゃんは東京の大学を卒業してすぐ消防士になった。
私も東京の大学に進学が決まっていたので、お兄ちゃんに会う機会が増えるんじゃないかと期待していた。
けれど、学生と社会人はやっぱり違った。
メールのやりとりすら次第に減っていき、まったく疎遠になってしまった。
お兄ちゃんはもう、私のことなんてどうでもよくなってしまったんだな、と寂しくて泣いた時もあった。

< 3 / 41 >

この作品をシェア

pagetop