クールな自称保護者様も燃える恋情は消せないようです
「俺はたまたまこの区域の担当になったんだ。まさか梨央が住んでいる区域とはな」
「すっごい偶然! うれしい! こんなところで会えるなんて!」
「喜んでいる場合か」

厳しい口調で返されて、小躍りしたいような気分は吹き飛んだ

お兄ちゃんは昔私を叱る時によくしていたように腕を組んで、凛々しい顔に厳しい表情を浮かべた。

「運が悪ければ死ぬところだったんだぞ。もっと反省しろ! しかも原因が煙草の不始末。不注意にもほどがある」
「ちがうあれは……彼氏の……」

そう、ボヤの原因。
事のきっかけは、付き合って数か月の彼氏と仲良くした後だった。

見てしまったのだ。知らない名前の女からラインの通知が来たのを。

彼氏は女友達も多いから、と普段なら気に留めなかった。けれどその時の私はなんだか勘がよかった。
だって『次はいつ会う?』 なんてライン、気にならない方がおかしい。

問い詰めたらヤツはあっさり浮気を認めた。
修羅場が始まって、あいつが出て行った。
私はショックと怒りで頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。そしてヤツがいい加減に消していった煙草のことなど、すっかり頭から抜け落ちていた。

……なんて顛末、お兄ちゃんには絶対言えない。
お兄ちゃんは昔から真面目で責任感が強くて、曲がったことが大嫌いだったから。
そんな話を聞けば、きっと私にがっかりするに決まっている……。

なんて言葉に詰まっていると、スマホが鳴った。
これは天の助け、とすぐにスワイプした私に待ち受けていたのは、しんどい宣告だった。


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