偶然に巡り合う幸せってあるのですね

「おい…待たせたな。店を閉めるぞ。」

時計を見ると、間もなく0時になるところだ。

樹は店の戸締りをすると、無言で歩き出した。
背の高い樹は脚も長いせいか、歩くのが早い。
私は追いつくようにと小走りして追いかける。

すると、間もなくして車が10台ほど停まる駐車場に到着した。
樹は白いセダンタイプの高級車に乗っている。

自分が運転席に乗り込むと、窓を開けて声を上げる。

「早く乗ってくれ。置いて行くぞ。」

私は慌てて樹の隣に座った。
チラリと樹を見ると、目が悪いのか眼鏡をかけて運転している。
眼鏡姿も端正な顔に似合っている。
今になって、少し心臓が大きな音を出し始めた。


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