交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

休日の観月建設本社は、平日の喧騒が嘘のように静まり返っていた。休日出勤は完全撤廃しているため、エントランスフロアに人の気配はまったくない。

永長が警備員に依頼したのだろう、休日には止まっているエレベーターが稼働していた。
三十二階で停止しているそれをボタンで降下させ、ドアが開くと同時に乗り込む。箱は再び三十二階を目指して上昇した。

階層の数字が上がるにつれ、吉鷹の怒りのゲージも大きく振れる。軽やかな音を立てて止まったエレベーターを降りた。

すぐ横にある応接室の扉の前で仁王立ちしているのは永長だ。いかにもSPっぽい頑強な体は、スーツを着ていても隠せない。


「副社長――いや、観月社長、お疲れ様です」
「お疲れ様。待たせて悪い」


表情を崩さず、真顔で軽く手を上げる。


「奥様のご容態は」
「無事に目を覚ました。荒牧結愛は?」
「中におります。つい先ほどまでドアを叩いて『出して』と騒いでいましたが」


永長がドアの前から避け、吉鷹はノブを手前に引いた。
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