交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

そろそろだろう。
吉鷹が腕を下ろしたそのとき、ノックと同時にドアが開き、永長が「社長、お見えになりました」と告げる。その直後、彼の後ろから「失礼します」と男性が慌てた様子で入室した。


「こらっ、結愛! お前という娘は、いったい何度親に頭を下げさせれば気が済むんだ!」
「お父様!? どうしてここに!?」


結愛の父親であり新都銀行の頭取である。


「俺が呼んだんだ。キミとふたりでは埒が明かない。荒牧頭取、申し訳ありませんが、新都銀行との取引をすべて停止させていただこうと考えております」


結愛に言葉を投げつけたあと、頭取に視線を移す。


「そっ、それだけはどうかご勘弁を! 観月建設さんほどの優良企業との取引がなくなるのは大損害になる」
「では、私の妻への誹謗はもちろん、就任式をめちゃくちゃにした償いはどうとっていただけるのでしょうか」
「娘には金輪際、あなた方に近づかないようきつく言って聞かせるから、吉鷹くんどうか……! ほら、結愛、なにをボーッとしてるんだ。頭を下げなさい!」
「ちょっ、お父様、やめて!」
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