交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

そんなことはひと言も言っていない。どこをどうしたら、そう受け取れるのか甚だ疑問だ。


「それは……。だけど吉鷹さんの将来を考えたら、新都銀行と密な関係になったほうがいいでしょう? 大きなプロジェクトにはお金だって必要なんだし」
「あいにく融資してくれる銀行なら、ほかにいくらでもある」
「えっ……」
「観月建設の融資を止めるよう、父親に頼むなら頼めばいい。ただし、うちほどの優良企業への貸し付けがなくなるのは、銀行にとっても相当な痛手だろうが」


資本市場から資金を自由に調達できる観月建設クラスの企業であれば、資金調達における銀行借入の比率は低下し、メインバンク意識も希薄になるもの。そこを敢えてメインとして扱っているのは長年の有効な関係性への礼のようなものであり、新都銀行がそれを覆すような姿勢を見せるならば、一気に断ち切っても観月建設は痛くも痒くもないのだ。


「新都銀行からの借入金を一括で返済し、長年の蜜月を解消してもいい。その程度の資金調達くらい造作もないことだ。俺の電話一本で銀行がいくつ手を挙げるか見せてやってもいいだろう」
「そんな……」


顔を歪ませ、首を横に振る結愛の前で腕時計を確認する。
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